夜の商店街

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いつもは閑静な商店街なのに、今日は満員電車のような人混みだった。
狭い商店街の真ん中には、様々な屋台があり活気づいていた。
俺はせっかく彼女と夏祭りにきたのにはぐれてしまい、ひたすら人混みをかき分けている。
子供の頃はこの人混みも好きだったが、今では面倒で疲れるだけだ。

俺はおもむろに上を見上げた。
アーチ状の屋根があり、雨をしのげるようになっている。
と次の瞬間、目の前から人がいなくなっていた。
人だけではなく、屋台や周りの虫の声すら消え去っていた。
俺は突然の出来事に立ちすくんだ。
ガランとした商店街は、先ほどの活気とは対照的に、俺に恐怖を与えた。
目眩がし、頭の中がグルグルと回った。
俺の意識は段々と遠のいていった。

気がつくと、周りには元の人混みがあった。
「たかし、はぐれないように気をつけろよ」
僕は隣の父さんを見上げ、つないでいた手に力を込めた。
その他
公開:19/07/25 21:38
更新:19/07/25 21:41

田坂惇一

ショートショートに魅入られて自分でも書いてみようと挑戦しています。
悪口でもちょっとした感想でも、コメントいただけると嬉しいです。

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