ネイチャーカーテン

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ウォーキングに出かけると、いつも通る駅前の広場に珍しく人だかりがあった。
近づいて見れば露天商だった。丸坊主で顎髭の長い仙人のような男が、場違いなほど布の束を並べ、叩き売りしていた。
ちょうど新しいカーテンを探していたので、布を一束ほど購入して帰宅すると、部屋の窓に取り付けた。
それから数日後、カーテンを閉めると、不思議な現象が起こるようになった。
部屋の中に七色の虹が架かったり、満天の星空と銀河が出現したり、極まれに雲海、オーロラ、スーパームーンが見られるなど天空の景色が広がる。そしてカーテンを開けると、元の部屋に戻る。
ただ、どのような景色になるかは天候次第なので、雨や雪などが降るときは、部屋の中でもテントを張らないと凌げない。まるでキャンプ場にいるかのようだ。
このカーテン、布の素材などは不明だ。ただ、使っていて気づいたことだが、部屋にいながら自然体験ができる特別な代物らしい。
その他
公開:19/07/25 20:41
カーテン 自然

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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