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雲の間から太陽の光が地上まで射すことを、俗に「天使の梯子(はしご)」という。それを伝う天使たちの通勤ラッシュを見ながら、娘雲は母雲を見上げた。
「私もほしいな、頭の輪」
「あんなもんどこがいいのかね」
母雲は呆れ顔だ。
「天使は山ほどいるけど、一人一人違うんだよ、輪は。女の子からおっさんまで、まぶしいの、色が薄くなってるの、チカチカ点滅してるの、どれも全部おもしろい」
「輪があったってつけられやしないじゃないか。丸い頭がないんだもの 」
母雲は、くだらないことを言っていないで天使に踏まれてできた凹凸を直せと言いつけ、行ってしまった。

そのとき、人間が雲を見上げていた。
青みがかった灰色の雲を丸く縁取(ふちど)るように、金色の光がにじんでいる。
これだけでご飯三杯、とはいかないけれど、明日も何とか頑張れそうだ。
人間が胸のうちでそう呟いたことを、娘雲は永遠に知らない。
ファンタジー
公開:19/07/27 09:20

UKITABI

ショートショート初心者です。
作品をたくさん書けるようになりたいです。

「潮目が変わって」(プチコン 海:優秀作)
「七夕サプライズ」(七夕ショートショートコンテスト:入選)
「最高の福利厚生」(働きたい会社 ショートショートコンテスト:入選)
選出いただきました。

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