空色の湖

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空は絵の具で塗ったように青く、周りでは蝉の声が響いていた。
少年は、身長の半分ほどある草をかき分けながら歩いている。
数十分進み続けると、突然終わりがきた。
目の前には直径数メートルほどの湖があった。
よく見ると、その湖は空だった。
水面が空を映しているのではなく、湖の中が空そのもので満たされているようだった。
子供特有の怖いもの知らずな性格だろうか。
次の瞬間、少年は飛び込んだ。
水のような浮力がありながら、呼吸はできた。
360度、空。
実際に空に浮いている、そんな感覚だった。
周りからは、風の音と遠くで響く飛行機の音しか聞こえない。
とても心地よかった。
しかし、少年は不意に気づいてしまった。
どうやって出ればいいの?
入って来た湖の穴はすでにはるか上空にあり、気づくと少年は猛スピードで落下していた。
公開:19/07/27 08:11

田坂惇一

ショートショートに魅入られて自分でも書いてみようと挑戦しています。
悪口でもちょっとした感想でも、コメントいただけると嬉しいです。

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