月に恋したひまわり

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 それは、月に向かって咲いていた。
 
 我が家のひまわりは、前からおかしかった。
 よく写真で見るような、一面の畑に咲いてるのじゃない。庭のすみっこに、ぽつん、と物思いにふけるように生えていた。
 しかも、つぼみは膨らむけれど、その顔がほころんだところは、一度も見たことがないのだ。
 
 それがある日、大会前の部活で遅くなった日のこと。
 夏でも、すっかり陽が海の向こうへ消えていく時間。
 
 花弁のふちが、月の光に白く輝いて。
 シャワーを浴びるかのように、光合成をしていたのだ。
 
「彼女」の視線の先には、満月があった。

 次の日も、その次の日も、「彼女」は、月に向かって微笑んでいた。
 
 ところが、月は満ち欠けする。
 寝待月、下弦、逆三日月と変わっていき……新月になる頃に、「彼女」は、土へ還っていった。
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公開:19/07/24 20:50
ひまわり

やぎ太郎( 牧場 )

紙ではなく文字を食べて吐き出すヤギです。

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