古き良き女

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―最近の女は遠慮ってものを知らねーな。
 出来上がった親父がスナックのカウンターで気勢を上げていた。

―自分のことは棚に置いて、ああしろ、こうしろって、注文ばかり多くてやがる。
 私は水割りの水をそれとなく多めに注ぐ。

―その点、昔の女には慎みがあったわな。
 ほれ、若くて亡くなった歌姫よ、テ―何とかいう。
 私は何も要らないのってな歌詞ばかりじゃなかったか。
 今の女に爪の垢煎じて飲ませてやりてー。

ほどなく、リクエストが入った。
注文の多いテレサ・テンはすぐボタンを押せる状態だ。

手を拭い終わるや否や、演奏が始まった。

え?
リモートにもオートにもしていない。
今日はヘルプの彩花ちゃんも来ていない。
私の背筋をつつーと冷たい汗がすべり落ちる。
まさか、この演奏、ライブ。

歌姫は今、歌い始めようとしていた。
その他
公開:19/07/24 20:05
更新:19/07/25 05:41
注文の多い

こぶみかん( 関西 )

ssの庭に迷い込んだこぶみかん。数々のお話の面白さに魅せられ、通い始めた。
気が付いたら、庭の片隅に挿し穂されていた。
いつか実を結ぶまでじっくり育つといいね。

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