びっくり箱

私は本が大好きで小学校に上がる前から活字本を読んでいた。本は子供の想像力を無限に掻き立てる。本を読んでいる間は無力な私が何でも出来る超人へと変わった。
そんな私だけの世界を壊したのが彼だ。
本が苦手な癖にいつも私のところにやってきた。
「見ろ！この本、絵が飛び出すんだぜ！」
その日、彼が持ってきたのは飛び出す絵本だった。様々なギミックに最初は興味のなかった私も徐々に目を向けた。
そんな私に満足したのか、彼は飛び出す絵本を自分でも作るようになった。
ある日、図書館の司書をしている私のもとに彼が箱のように大きな飛び出す絵本を持って現れた。
今度はどんな内容なの？中身を確認する。
本の世界から一人の少女を連れ出す少年の話。それは私と彼の物語だった。
最後のページにはとっておきのギミックで「僕と結婚してください」の文字と一緒に指輪が現れた。
私は指輪を受け取り、「これじゃびっくり箱だよ」と笑った。