付喪神

それは、引っ越しの前日に起こった。
夜、目を覚ますと小さな侍たちが行列を作り行進していたのだ。背丈は7センチくらい。いわゆる大名行列。おれは恐る恐る「おい」と声を掛けた。刹那、侍たちは一斉に振り向いた。
「曲者じゃー！」
小さな侍たちが刀を抜いて切りかかってきた。
「痛、痛たた…」まあ、小さいので大したことはない。しかし追い払っても追い払っても向かってくる。おれは疲れ果て眠ってしまった。

翌朝。そこには、つまようじが散乱していた。おれは、あることに気づいた。引っ越し用のダンボール箱に、いる物、いらない物があり、そのいらない物に古いつまようじの束があった。なるほど、つまようじに付喪神（つくもがみ）が宿っていたのだろう。神様を捨てるわけにはいかないな。おれはつまようじをいる物の箱に入れ、この家を引っ越した。

無事に引っ越した新天地では、おれの経営するラーメン屋に、行列ができるようになった。