ありふれた話

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車内で、突然男性が、「ああ・・」と暗い溜息をついて、頭を抱えた。
事なかれ主義で生きてきた私でも、思わず声をかけるほどの悲痛な声だった。
「大丈夫ですか?」
見ると、ハンサムな青年だった。
聞けば、彼は大学生だという。貧しいためバーで働きながら学費を払っていたが、間に合わず、今日までに支払わないと退学になってしまうそうだ。
なんて可哀そうな話なのだろうか。
能力がありながら、貧困で行き詰まるなんてもったいない!
私は「いくら必要なの?」と聞いた。
 「百万です。」

「絶対に詐欺だって!」話を聞いた友人は、みんなそういった。
でも私は信じている、あの素敵な青年の熱い、まっすぐな瞳が忘れられなかった。

半年後、私は彼にバーに呼び出された。
否応なしに胸が高まる。
「あの時は、本当にありがとうございました」
私は、きっちり百万円を返してもらえた。
そして、それ以上のことも何も起こらなかった。
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公開:19/07/24 17:00

はるぽこ( 東京 )

読んでいただき、ありがとうございます。

文章を書くのは、好きと同じくらい不安です。
独りよがりにならないようにしたいです。

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