大二郎の影

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俺は貯めてきた財産を弟を育てる
ために取り崩していった。
ある日、遊びまわる弟は池に落ちたと聞いた。
家にお客をもてなさなければいけないのに、
困ったものだ。
怒って、現場に駆け付けてみると、
弟は怪我どころか、はしゃいで駆け回っている。
お客が家に来た。
座敷に上がってもらい、席を設けた。
向かい合って話すうちに、弟の事が話に上がった。
「どうでしょう、弟さんをうちに預けるというのは?」
「それは、養子にという事でしょうか?」
俺は弟の事で苦労が多いことは確かだが、
厄介者と思った事は無い。
「大二郎はうちの弟です。よそにはやれません」
「しかし、養育費や生活の事を考えると大変でしょう?」
客人は焦っている様子だった。
断りを言い、帰ってもらった。
この暑い季節。
戸の隙間から入る風は涼しく、
庭で遊ぶ大二郎の影が障子に映り込んでいた。
それが、消えて亡くならない影であることを祈った。
その他
公開:19/07/23 21:59

小脇 進( 埼玉県 )

小脇 進と申します。
まだ小説も、ショートショートも書くのは初心者です。
※最近は詩作を中心に活動しています。

「分かってないなあコイツ」
と思っても、温かく見守っていて下さい。
よろしくお願いします。
                                                                               
2019年5月19日(日)17時55分頃より始めました。
以上です。

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