やしろ七不思議~その八、八代の七

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撚りを戻した注連縄を、階段に腰掛け、呆けた様に眺める。
願いの叶う七不思議。最後の七福塚を試した。隠れた八つ目を見付ければ、呪いは解ける。解けた結果が、目の前の現状。
〆子の落ちた注連縄。割れた鯱の瓦。崩れた石塔。
結局戻って来なかったユキ。

七不思議集めは、一種の呪法。百物語やこっくりさん、丑の刻参りに同じく、重ねて増幅し、超常現象を起こす。呪法は諸刃で、その反動が術者に負い切れない時、ユキの様に消えてしまうのかも知れない。呪いを無に帰し、術者を救済する呪詛返しが、七福塚だったのかも知れない。

『違う』
あれは本当にユキの声だったのか。
訊いてみようにも、鯱は割れ、狛犬ももう喋らない。
『探し物はそこにない』
狛犬の阿の言葉は、僕の無意識の逃げではないのか。
鳥居を見据える阿に目を向け――
背中が粟立った。
隠された八つ目。七不思議はもう一つある。
陽の傾いた境内に、僕の影が伸びた。
ファンタジー
公開:19/07/24 22:40
更新:19/07/24 22:49

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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