ひき逃げ_警部との会話

まさか、あいつに古傷をえぐられるとは思わなかったよ。
あいつが何を弾いたかって？　その前に俺の話を聞いてくれ。

あの時、地震が発生し俺たちは緊急出動で被災者の救助に駆り出された。
隣町に住んでいる家族が心配だったが、公僕の手前公共を優先せざるをえまい。
隣町は防災対策がしっかりしているし、大丈夫だろうと思っていた。

甘かった。自慢の１０ｍの堤防など紙同然だった。
それからは悪夢の日々だった。少しでも暇があると遺品を探して避難所などを捜し歩く日々が続いた。しかし自力では限界があり探偵を雇い、遺品を探してもらう事にした。
一か月後、息子のものらしい泥まみれのランドセルが見つかったと連絡がきた。
大分擦り切れていたが「オオトリ　ユウジ」と書かれた文字は見覚えのあるものだった。
妻の遺品は見つからなかった。
　
これでわかったろう。あのくそったれが弾きやがったのは「花は咲く」だ！