マサチューセッツ州からの手紙

拝啓、友へ

元気かい？　私は今、町唯一の宿でこの手紙を書いている。小さな田舎の港町だ。外では蛙がけろけろ鳴いている。いい町だ。寂れてはいるがそれが逆に静かでいい。外では蛙がけろけろ鳴いている。波の音と潮の匂いとがすぐ傍にある。私の故郷とよく似た雰囲気でね、なんと言うか、呼吸をするのがとても楽に感じるんだ。しばらく此処に滞在しようと思っている。外では蛙がけろけろ鳴いている。



…ああ！友よ！突然の文字の乱れをどうか許してほしい。なにしろとても信じられない！たった今起こったこの出来事を、この興奮を、一体どのような言葉で紡げば君にもそっくりそのまま注げるというのか！

あの窓に！窓に！窓で！
父が！母が！けろけろ鳴いている！

さァ、こうしてはいられない。私も早く行カなければ。私の内で蛙がけろけろ鳴いている。此処に来られてよかった。ではどうぞ、どうぞ、お元気で。皆にも宜しく。ゐずれ、マた。