やしろ七不思議～その四、けやきぼっこ

昔から変わり映えしない景色で、歴然と変わったものが一つある。
神木の大けやき。文化財にも制定され、樹齢は三百年以上。大人が二人手を繋いで、やっと囲める巨木だった。やんちゃだった頃、登って遊んで叱られた。
もう三年前か。
台風で折れたと聞いた。今は苔むした切り株しか残っていない。

四の不思議：けやきぼっこ（欅木子／欅未通女）
けやきを囲んで手を繋ぐと、知らない子が混じる。
名前が当たれば縁結び。大きくなっても一生仲良し。

ぼっこの正体は不明だが、縁結びのからくりは判る。
子供なら、三人でどうにか囲める。足りない一人はぼっこが埋めるから、試すのは二人で足りる。大きくなれば、ぼっこの力を借りる必要もない。
目を閉じ、ない幹に腕を回す。空気を抱いて待つ。
ふっと指が重くなる。
「……ユキ！」
ぱっと解ける様に軽くなった。それでも待った。

これも違ったのだ。自分に言い聞かせるのに随分掛かった。