やしろ七不思議~その三、しゃちはこ

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注連縄の〆子に塞がれた鳥居。
白鳶の警告は、先を阻む為と理解しながら、退路を断たれた気になった。
『往ネ』
皺声を思い出し、また竦む。あれは違う――違うと思いたかった。探し物は、あんなに冷たいものではない。
境内を見渡しても、飛び去った羽は付近に無い。どのみち同じなら、先へ進むと決めた。

三の不思議:しゃちはこ(鯱葉子)
瓦の鯱の鼻葉を抜くと、質問に答えてくれる。
ただし、お礼がないと食べられる。

改修工事で外した、建立当時の瓦だ。鯱は火避けの守り。捨てるのは罰当たりと考えたか、社脇に置いてある。雨が当たる場所で、鼻の穴によく草が生える。
これは昔試した。駄菓子など供え、葉を抜く。成功した事はない。
順序が逆だったのだ。今日も生えた葉を抜く。
――ギギ。鯱の口が開く。
「ユキは何処にいる」
『シンダ』
顎がぐわりと被る。下腹を蹴って飛ばす。
階段の欄干に激突し、鯱は口から二つに割れた。
ファンタジー
公開:19/07/23 16:46

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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