やしろ七不思議~その一、おころび様

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何年ぶりかに帰郷し、小さな村社の参道に立ち竦む。
幼い頃馴染んだ、境内にまつわる七不思議。七つ集めれば、願いが叶うと教えられた。
この齢で、今更追うのも馬鹿だ。それでも確かめたい。探し物が、今もここにあるのかどうか。

一の不思議:おころび様
参道の真ん中で転ぶと、産まれ道を外れる。
おころび様に取って代わられ、次の転びまで道に捕まる。

神社の石柱の手前、境界線を描く様に溝が走る。全長でも十間余り。件の箇所までは十数歩。片足越えれば捕まらない。
直前で足が鈍る。指一本の幅と深さ。躓いて、転ぶ前に越える。おころび様は水子の化生。生身の肉が欲しいのだ。
ガツ。爪先を当てよろめく。ここで後足を前へ。
――ぐん、、足首に痛み。振り返った眼に、かさかさ乾いた赤子の指。駄目だ、倒れる!

膝下を風が薙ぎ、指の感触が退く。たたらを踏んだ足が溝を越えた。
風は空でとんぼを切り、鳥居の注連縄に爪を掛けた。
ファンタジー
公開:19/07/23 04:44

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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