夏の苺

12
16

「おいしい! すっごく甘い」
「でしょ?」
「実も大きめで、つやっつや」
「夏になってもこんなおいしい苺が食べられるなんて、ほんと幸せ」
「だね」
「この浜のそばで作ってるんだって。見て、メニューのショートケーキみたいなキャラの横」
「おー! 生産者情報。へぇ、土や肥料が違うんだ! なんだろね、秘伝の成分って」
「わかんない」
「あ、ジュースもきた」
「きれいなピンクだねぇ。……美味い」
「渇きが癒えるぅ」

その頃、浜辺のコミュニティFM局には問合せが殺到していた。
「若い女の子たちの声とベリベリいう雑音が混じるんですけど、何?」
「話に出てる苺はどこで食べられますか?」

局のスタッフ正津(しょうづ)は外に出た。が浜には誰もおらず、苺のへたがへばりついたプラスチックパックが砂に埋もれかけていた。
パックの透明フィルムは、ベリベリと風に吹かれている。
苺生産農家など、近くになかった。
ホラー
公開:19/07/22 23:38
ベリショ祭り Vol.3

UKITABI

ショートショート初心者です。
作品をたくさん書けるようになりたいです。

「潮目が変わって」(プチコン 海:優秀作)
「七夕サプライズ」(七夕ショートショートコンテスト:入選)
「最高の福利厚生」(働きたい会社 ショートショートコンテスト:入選)
選出いただきました。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容