間と運

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「この会社なら、例えば、俺を追いかけている連中の動きを逐一、俺に教えることが可能だと聞いたぞ」
「それは『間』の調整ではなく、移動監視業務です。理論上は可能ですが人員不足で…」
「『間』の調整ってのは何だ?」
「人間は固有の周波数を宿命付けられています。明滅する交流電灯とでもいいましょうか。その点滅周期に応じたデジタルな時間を我々は相関的に移動しており─」
「難しいんだよっ! つまり、『間』の調整をすれば捕まらないのかっ!」
「『間』が良くなりますので、ばったりと不運に出くわす確率は激減いたします」
「じゃ、逃げ切れるんだな」
「ただ、仮に追っ手の方も『間』の調整をしていた場合は、本人の『運』次第ということになりましょうか」
「守秘義務もあるな? よし調整してくれ」
 施術室の扉が開いた。
「所長さん。早速『間』の調整の成果が出たよ。おい、お前。詳しい話は署でゆっくり聞かせてもらおうか」
ミステリー・推理
公開:19/07/21 11:47
更新:19/08/24 23:22
間の話

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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