ベリーショートの女

「頼むよ！スマホ貸してくれよ！」

突然現れた男に貸すなんてと躊躇していると、男は突然暴れ出した。

「やめてくれ！読むから！」

狂ったように頭を掻きむしり、自分の髪の毛を頭皮ごと剥き始めた。
そして皮が全て剥かれた後、焦点の合わぬ目で倒れた。男は「ベリショ、ベリショが…」と泡だらけの口で呟いている。

一体何が起きたのかと見つめていると、目の前にベリーショートの女が突然立っていた。

「ベリショ読むわよね」

女が何を言っているのかわからなかった。

「無料なのに」

ベリショ？わからない。

「じゃ、あなたもベリショになるしかないわね」

意思に反して僕の手が自分の頭髪を掴み、一気にバリバリと剥き始めた。
自分の皮が剥がれていく音を聞きながら、そういえばベリショーズというショートショートの本が電子書籍でリリースされたとSNSで見た事を思い出していた。

あの時ダウンロードしておけば…