セッションの外側で

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忘れ物をして学校に戻ると、校舎はひっそりと静まり返っていた。誰もいない廊下を歩くと、時が止まった世界で自分だけが動いているような不思議な気持ちになった。
教室の前まで来ると、中から微かに話し声が聞こえた。忍び足で近づいて窓を覗きこみ、「あっ」と声が漏れそうになるのを必死でこらえた。
女子同士が抱き合ってる。
ドキドキしながら息を殺して様子を伺うと、沙川さんと吾妻さんだった。あの二人、そんなに仲良かったかな。もしかして秘密の関係?
「……ロックだ」
沙川さんの胸に顔を埋めた吾妻さんが言った。
ろっく?
54?
いや、69?
トップが?
アンダーが?
じゃあ沙川さんは何カップ?
吾妻さん、顔でバストサイズ測ったの?
私の頭の中は「?」でいっぱいだった。
顔を上げた吾妻さんと沙川さんが見つめあい、幸せそうに笑った。

きゃああぁぁ!

私はキュンキュンと高鳴る心臓を持て余し、その場に崩れ落ちた。
青春
公開:19/07/21 19:39
ベリショ祭 ベリショーズvol.3 ゆたさんの「セッション」より 勝手にサイドストーリー

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

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