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今はすっかり雪に埋もれている図書館に僕は行かなくてはいけない。
あの図書館に明かりを灯すのが僕の役目だ。

扉を開けると外は吹雪だった。
一瞬僕の体が反応して、暖かい部屋に戻りたくなる。
そんな気持ちを追い払い、僕は歩き出した。

雪が容赦なく吹き付ける。
口の中に雪が入り、髪の毛が凍り付く。
僕はあの図書館の事だけを考えながら歩き続ける。
深く積もった雪に膝まで入り、一歩進むのも大変だった。

やがて見えてくる吹雪の向こうの黒い影。
レンガ造りの図書館だ。
雪に半ば埋もれたドアを開き、やっとの事で中に入る。
廊下を歩きカウンターの前。
電灯のスイッチを入れると明るくはなったけれど、まだまだ図書館は冬に支配されている。
僕は「夏」とラベルの張られた棚から一冊の本を取り出して広げる。
その本にはどのページにも夏があふれていた。
黙読していくうちに部屋は暖かくなり、窓の外には夏の景色があった。
ファンタジー
公開:19/07/18 18:37

家韮真実(いえにら・まみ)( 兵庫県 )

もともとは漫画を描いていました。
漫画のアイデアを文字で書いているうちにショートショートも書くようになったんですよね。
名前はもちろんペンネーム。
実際にはない名字を考えました。
読みは、男の子気分の時は『いえにら・まさみ』
女の子気分の時は『いえにら・まみ』に変わります(笑)

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