石のお地蔵さま

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「つらいことは お地蔵さまが みんな代わって受けて下さる」
かあちゃんは手を合わせ言ってた。私は幼心にも、お地蔵さまが可愛そう、と思い頭だけ下げた。お地蔵さまは両手のひらを上に向け、何かを受け止めるような仕草をしていた。

都会の暮らしに疲れ果て、実家に戻り死んだかのように眠り続けた。ヒグラシが鳴き始めた夕方、目覚めた私は散歩に出掛けた。「チリリリ」人の愚痴は聞いていたが虫の音など耳にしていなかった。「まだあったんだ」私は50cmほどの大きさの石のお地蔵さまの前にしゃがみ「こんなに小さかったかな?」と言い、不意に母の言葉が思い出された。

「つらいことは お地蔵さまが みんな代わって受けて下さる」

不謹慎とは思いつつ、お地蔵さまの頭に手を乗せた。ぽっと優しい温もりを感じ涙が溢れた。止まらない涙はお地蔵さまの手のひらにポタリと落ちる。辛かった事を涙と一緒にお地蔵さまは受け止めて下さった。
その他
公開:19/07/20 14:50

まりたま

いつか絵本を1冊出せたら...
そう思いながら書いてます。
少しだけホッコリしていただければ嬉しいです。
でも、たまにブラックも書きますけど。

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