タクしぃー

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しこたま飲んだ。前後不覚。来たタクシーを止めて、後部座席に倒れこんだ。

「この1万でぇ、行けるとこまで、な」

あいよ、と運転手はお金を受け取って車を発進させた。

「こんな客も相手にしてくれるたぁ、ねぇ」
「それが日本人ってやつですよ。だんな」

変わった運転手じゃねえか。少し酔いが冷めてきた。窓の外はすでに知らない町だ。

「日本人なんざ、言われたことしかできねえのかと思ってたぜ」
「いやいや逆ですよ。あえて皆まで言わない。受け手に託しちゃうんですな。だからこそ17字で詩が成り立つし、忖度だってお手のもの」

まったくだ。だから俺ばかりが損してる。くそっ。もう一杯ひっかけるか。そろそろメーターも1万…。

「おい、止めてくれ」

返事はない。代わりにアクセルがベタ踏みされて、運転手は猛スピードのタクシーから転げ出た。目の前にひろがる夜の海…。

「ば、馬鹿野郎!深読みしすぎだ」
ホラー
公開:19/07/19 22:35

糸太

400字って面白いですね。もっと上手く詰め込めるよう、日々精進しております。

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