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昭和の時代にはな、今じゃ考えられん仕事があったんや。ワイが局員時代にやってたんがそれや。番組が終わると砂嵐が流れたやろ、あの音を録るんがワイの仕事やった。
本当に砂漠まで飛んでな。しかもより臨場感のある音を届ける為に生中継やったんや。嵐の中ずうっとガンマイクを構えてな、さながら弁慶の立ち往生や。
だが、その役目も遂に終わる時が来た。地球環境の変化でな、砂嵐が起きる場所も時間も読めんようになったんや。
で、最後の仕事の時や、観とったんか?そうか知ってたんか……いや、ガキははよ寝ろや。
あの時、急に音が消えてキーンてなったやろ。いや耳のせいやない、あれな急に嵐が止んだせいで、飛行機が飛んでく時の音が入ったんや。ワイを乗せ忘れたな。
ずっと忘れたままやったんやて。まあ、社会ってのはそんなもんや……
そんなこんなで父ちゃん今帰ってきたわけや。明日も仕事早いんやろ、TVなんか観とらんではよ寝ろや。
その他
公開:19/07/19 21:12
更新:19/07/19 21:12

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