土曜日が捗る思い出の鍵

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 土曜日は半日で学校が終わるだなんて、最高だ。
 僕はランドセルにビニール紐でぶら提げた家の鍵を揺らしながら、課題図書の『ふしぎなかぎばあさん』を歩き読みしている。だって家のアパートには見たいものや読みたいものがたくさんありすぎるから、夕方、お母さんが戻ってくるまでは、宿題よりもそっちを優先することにしてて、それが一番捗るのが土曜日なんだ。
 お母さんは木工所で積み木を作っていて、晩御飯のおかずを買って、スーパーカブをブンブンいわして帰ってくる。お父さんは家のアパートの管理人なんだけど、いつも家にいない。
 無事帰宅。
 僕はアパートに並ぶ12枚の扉を見渡す。今日は月末の土曜日だから、204号室で『750ライダー』の続きを読めるし、103号室には『Oh!PC』の最新号があるはず!
 はやる気持ちを抑えて家に入った僕は、ランドセルを椅子の背に掛けると、金庫の中の鍵束から今日の鍵を二つ選んだ。
その他
公開:19/07/17 15:22

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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