ロラン

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「無知のまま生きる哀れな詩人よ。今日は何をしにこちらにいらしたのですか?また、世界の非常さを知らずに生まれた赤子のように散々わめき散らし、挙げ句の果てには、一人で夜な夜な涙を流すのが嫌でこちらの慈悲ぶかき酒場にいらしたのですか?」
「まあ、そういわずに葡萄酒をひとつくれないか?」
「また、その身を酔いに預けるとは、何百年もの輪廻の中を彷徨うことになりますよ。仕方ないですね」
マスターは葡萄酒を差し出す。ロランは、それを一気に飲み干す。
「人間には耐えきれないことを山ほどある。恋に破れた兵士のように、世界の無情さに耐えきれずに命を落とした臆病者のように、ただ、私は頭を悩ますばかりなんだ」
「そうですか。それはお辛いですね。それじゃあ、自然が落とした涙が恋しくなるはずですね」
ロランはカウンターに腕をのせ、それを枕にして眠った。
その他
公開:19/07/16 22:43

神代博志( グスク )









 

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