びっくり箱

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「ばあっ!」
僕が飛び出しても、目の前の少女は眉一つ動かさなかった。僕のびっくり箱の道化師としてのデビューは失敗に終わった。蓄えられたバネのエネルギーを無駄なく運動エネルギーに変換して、一気に爆発させる。僕のジャンプは完璧だった。でも、タイミングよく飛び出すことを意識しすぎて、表情や角度への意識が足りなかった。
強張った顔で体を揺さぶりアピールを続けても無駄な努力だった。伸びてしまったバネは、僕が箱に戻る事を許してくれない。
「つまんないプレゼント」
少女の冷たいひと言がグサリと胸に突き刺さった。
「ごめんなさい」
「謝ることないわよ」
「もう一度チャンスをくれないか。次は腰を抜かすほど驚かせてみせるから」
「タネがわかってて驚くわけないじゃない」
「それもそうだね」
「…え、な、なんでびっくり箱が喋ってるの!?」
「え、今さら?」
「きゃあああ!」
「あ、よかった。やっと驚いてくれたね」
ファンタジー
公開:19/07/16 22:12

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

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