堕卑犯の刑

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―堕卑犯2時間の刑?そればっかりは、お許しを。
女はわなないて、慈悲を乞うたが、身を捩りつつ、引き立てられていった。

―堕卑犯1時間の刑に処する。
―ひっ
ムンクの叫びに固まった顔のまま、女はやはり退場させられた。
記録には「堕卑犯50分」「堕卑犯1時間30分」と、苛烈な判決が相次いだ。

地上では、炎天下、刑に服する人の列が伸びている。
列は遅々として進まず、地べたにしゃがみ込む者も少なくない。待った挙句屋内に入ると、黒い粒が大鍋にぐらぐら煮立っているさまを見せつけられる。さしずめ白濁した蛙の卵だ。
とうとう順番が来て器を渡される。少しでも執行を延ばそうと、写真を撮ったり、仲間と連絡をとったりして時間稼ぎをする輩。しかし、抵抗もそこまでだ。
罪人は天を仰いで、絶望のうちに容器の黒粒汁を口にする。
卑しい罪を犯し、地に堕ちた者への罰。

入口の「タピオカ」の看板が西日を反射している。
その他
公開:19/07/16 19:50
更新:19/07/17 14:46

こぶみかん( 関西 )

ssの庭に迷い込んだこぶみかん。数々のお話の面白さに魅せられ、通い始めた。
気が付いたら、庭の片隅に挿し穂されていた。
いつか実を結ぶまでじっくり育つといいね。

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