変声

気の狂った様なバイオリンが喚いてる。
サラサーテのツィゴイネルワイゼンの、第３楽章を倍速して、強烈にアレンジした感じ。音の１個１個、分離して聞き取れないレベルでまくし立てる。まぁ怒ってるんだな、程度しか判らない。
昨日はリストの鬼火から、コルサコフの熊蜂の飛行。弦楽編曲は初めてだと思ったところで、絃がバツン！と切れた。机に掌を叩き付ける音は普通に響く。平手を食った頬も、痛み込みで正常。喋る声だけおかしくなる。中身を聞く気がなくて、声も取っ変えて、口が動くのは見てたいなんて、我ながら歪んでる。

変声機。耳穴式の、面白そうだから買ったんだ。人の声が違う風に聞こえるやつ。モードの中に『音楽』があって、君はどんな楽器で音で鳴るのかなと思った。君を聴いてみたかった。

大喧嘩になって、とっくに外した。
戻らなくなったんだ。多分、俺の鼓膜が変性したから。
君の声を思い出そうにも、聴けば聴く程見失う。