7
8
鏡を割ったのは僕だった。
昼中抱いて混ざり合った君を、夜にあいつの胸へ帰すのが嫌だった。腕に閉じ込めて離したくなかった。君の一切全部、永久に僕だけのもの。どうすれば叶うか考えて考えて、古い謂伝えを思い出した。
割れた鏡は破局の標。二人で分てば、盤石の仲にも罅が入る。
そうだ。割ってしまえばいい。君とあいつを繋ぐ鏡を、粉々に砕いて何も映せなくしてやろう。戻る場所さえ奪えば、君は僕から逃げられない。
いつもの様に熱を共有した後、伏せた顔を掬い、抗う脚を絡め取り、間近に迫った鏡を力任せに叩き割った。
ドシャンと天を衝く水柱を上げ、鏡は境界面で真っ二つに割れた。細片が君と僕とに突き刺さり、引き裂き、真紅の光の雨を撒き散らした。
君の深部が解体した僕を焼き、あいつの上にばらばら落っこちては、触れる刹那から蒸発し続けた。
溶鉱炉の黄昏が世界を染め、血みどろの太陽を残し、空も海も消えて無くなった。
昼中抱いて混ざり合った君を、夜にあいつの胸へ帰すのが嫌だった。腕に閉じ込めて離したくなかった。君の一切全部、永久に僕だけのもの。どうすれば叶うか考えて考えて、古い謂伝えを思い出した。
割れた鏡は破局の標。二人で分てば、盤石の仲にも罅が入る。
そうだ。割ってしまえばいい。君とあいつを繋ぐ鏡を、粉々に砕いて何も映せなくしてやろう。戻る場所さえ奪えば、君は僕から逃げられない。
いつもの様に熱を共有した後、伏せた顔を掬い、抗う脚を絡め取り、間近に迫った鏡を力任せに叩き割った。
ドシャンと天を衝く水柱を上げ、鏡は境界面で真っ二つに割れた。細片が君と僕とに突き刺さり、引き裂き、真紅の光の雨を撒き散らした。
君の深部が解体した僕を焼き、あいつの上にばらばら落っこちては、触れる刹那から蒸発し続けた。
溶鉱炉の黄昏が世界を染め、血みどろの太陽を残し、空も海も消えて無くなった。
ファンタジー
公開:19/07/17 20:06
中国故事『神異経』より
破鏡:男女の離縁
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO
ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
ログインするとコメントを投稿できます