真夜中の手当て

4
8

彼の手を握って夜の街を歩く。
私には失うものなんて何もない。
体を木っ端微塵にされたとてそれが何だというのだろう。自分の体を正しく守ることが出来ない。
ただ誰か隣にいてほしい。
そんな生まれたての赤ちゃんのような幼稚な欲求はもう言える歳ではない。
無条件に甘えることなんて出来ないからセックスがその対価なら私はそれでいい。
いつのまにか彼と横並びで歩いている。どのくらい歩いただろう。商店街はとっくに抜けて辺りは住宅地だ。
「迷いましたね」
男は言った。
「そこのベンチで一休みしましょうか」
私はそれに続いた。
私をベンチに座らせると男はバックから絆創膏を取り出した。
「靴擦れしてるから」
男はヒールの紐で擦れて血の滲む私の足に絆創膏を貼った。
そのとき初めて痛みに気づいた。

私は泣いた。
今までぞんざいに扱ってきた体を大切に扱われて初めて少し大切なもののように思えた。
恋愛
公開:19/07/15 01:11

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容