ゴキブリ・フェミニスト

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「最近、ゴキブリが多いね」
夫の言葉に、私は首を傾げた。「そう?私は見ないけど」
彼は「よく出るよ」と口を尖らせた。

翌日、夫の「出たぞ」という声に、私は殺虫剤を手に居間に駆けつけた。
見ると太ったゴキが床にいる。
雑誌を丸めて追う夫と共に、部屋の隅に追いつめた。
スプレー缶を向け、噴出しようとした時、そのゴキブリがしゃべったのだ。
「奥さん、その仕打ちはないっしょ」

はぁ? 私たちは顔を見合わせた。虫が何故しゃべる?

そいつは答えた。
「あっしは突然変異のゴキでして、知能が高いんスよ。意識もイマ風で、子どもや女性に優しいゴキブリですわ。それで、奥さんの目に触れないよう、配慮してまして。なのにその仕打ちは酷でさぁ」

私は言った。
「ダメね。女性を殊更、弱者扱いする考えは、もう古いのよ!」
ゴキブリは頭を下げ、パッと羽を広げて「出直して参ります」と言い、部屋の外に飛び去ってしまった。
ファンタジー
公開:19/07/14 21:03
更新:19/07/14 22:45
フェミニズム いろいろむずかしい

tamaonion( 千葉 )

雑貨関連の仕事をしています。こだわりの生活雑貨、インテリア小物やおもしろステーショナリー、和めるガラクタなどが好きです。

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