ソープ・オペラ

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浴室で歌うのは、はしたないでしょうか。でも、黙っていると緊張して。湯船を上がって出て行くのが、正直怖いのです。
授業で習った、シューベルトの『セレナーデ』を歌いました。途中で通えなくなり、これが最後に覚えた曲だったので、記憶に残っているのです。二番まで歌い、滴を振り払う様に浴室を出ました。

「お待たせしました」
「……はい。いえ、大丈夫です」
普段より静かな声。普段と言っても、直接言葉を交わしたのは、家財を整理する算段と、結納と挙式の当日くらいですけれど。
「よろしくお願いいたします」
布団に三つ指をつきました。事実上の身売りである事も、お相手がお父様より年輩である事も、もう戻る家もない事も、全て仕方のない事。
「二番があったのですね」
唐突に呟かれ、私は怪訝な顔を上げました。
「私は音楽に疎くて。お恥ずかしながら、初めて知りました」
首を竦め、照れた様に頭を掻く仕草は、少年の様でした。
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公開:19/07/14 20:02
寝物語。 浴室と小夜曲(セレナーデ) ソープ・オペラ(=昼メロ)

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。

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