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箱を愛して数十年。私はいつしか箱職人として人間国宝に指定されていた。
そんな私はついに気体である霧で箱を作ることに成功した。霧の箱だ。
その技術に多くの者が驚くも、関心を向ける者はいなかった。
霧の箱なんて作ったところで中に何を入れるんだ?
作り手以外、手にすることの出来ない箱に何の意味がある?
不必要な技術。誰もがそう考えた。

ある日、一人の老人が霧の箱を欲しいと言ってきた。
その老人、何と霧の箱を手にすると蓋の開け閉めまで自在に行っているではないか。
驚く私を尻目に老人は「この箱、頂いても宜しいかな?」と聞いてきた。
勿論いいがこんな物、値段なんてどうやって付けよう?
老人は私に石を差し出した。これはダイヤモンドじゃないか!
「私にとってはただの石ころだ。お互い、不必要な物を交換しましょう」
老人は「これで仙人仲間に霞を送ることが出来る」と嬉しそうに笑った。
成程。価値は人其々か。
公開:19/07/14 19:04
更新:19/07/15 18:25

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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