局地的冷夏

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「あっつー……」
 オレがアパートに戻ってくると、ちょうど大家のおばあさんが水を撒いていた。

「毎日あっついですね」
「あら、そう?」
「そうですよ。ゆうべなんか寝られなくて……」
 Tシャツをパタパタあおいでみるも、汗でくっついて、ちっとも涼しくない。

「それなら、エアコンつけた方がいいんじゃない?」
「エアコンねー。電気代食うし、なかなかねえ……」
「気をつけないと、熱中症で倒れるわよ。私みたいに」
「えー、倒れたんですか? あ、大家さんの周り、涼しい」

 近づくと、大家さんの周りは、ひんやりとした空気が漂っていた。
 打ち水って結構涼しくなるんだなあ。そう思って、地面にできた水の跡を目で追う。
 
 大家さんの周り。影がなかった。
 
 ハッとして顔を上げる。目が合う。
 大家さんは、太陽のようにニコッと笑った。
ホラー
公開:19/07/14 16:47
猛暑 怖い話 幽霊

やぎ太郎( 牧場 )

紙ではなく文字を食べて吐き出すヤギです。

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