青春上映会

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映画館の前を通りかかったとき、ひとりの老人が泣いていた。
「大丈夫ですか?」
と、声をかけると、老人は
「私の青春だったんだ。毎日、野球をしたあの頃が…」
と言い、“青春上映会”という看板を指差した。
「お嬢さんも観ていくといい。素敵な上映会だよ」

映画館に入り、“青春上映会”のチケットを購入し、シアター7へ。なかには誰もいない。私が席に座ると、上映が開始された。

音楽室が映し出された。見覚えのある、K高校の音楽室…。吹奏楽部の部員たちが次々に音楽室に入ってくる。フルートのあの子、ホルンの仲良し二人組…。知ってる。あの子もあの子もあの子も…!大好きな同級生、大好きな後輩たち。そして、大好きな音楽。

気づけば、私は泣いていた。



上映が終わり、映画館を後にする。
“青春上映会”。老人が言っていた言葉の意味がわかった。
間違いなくあの時が、私の青春だ。
青春
公開:19/07/15 14:05
更新:20/12/22 16:01
記念すべき50作目

すみれ( どこか。 )

書くこと、読むことが大好きな社会人3年生。
青空に浮かぶ白い雲のように、のんびり紡いでいます。
・プチコン「新生活」 優秀賞『また、ふたりで』
・ショートショートコンテスト「節目」 入賞『涯灯』



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