機械がどんどん廻る廻る

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父ちゃんの職場は町工場。従業員は父ちゃん一人。だから工場長でもあるんだな。
四角い凸凹した板にドリルを廻し、面取り刃も廻す。汗もかかず、顔色変えずにハンドルだって廻す廻す。まるで自分自身が機械みたい。今日も機械がどんどん廻る廻る。

そんな父ちゃんでも失敗する事があるみたい。何気なく工場を覗いた時、箱に入った板の中に、一個だけ穴の数も位置も違うのがあったんだ。果たして知らせるべきか、でも矜持というのがあるからな。
その夜、布団の中で悩んでいると、父ちゃんが外に出ていくのがわかった。後をつけるとそこはセメント工場の敷地。宙に浮かんだ父ちゃんは光る板を掲げていた。
すると空から大きな船が下りてきて、父ちゃんを乗せて飛んでった。宇宙船?本当に船の形をしてるもんなんだな。
セメント樽の側に落ちた板は例の失敗作で、光っている穴を結べばその形は……。


あの工船は今も蟹座に向かっているのだろうか。
SF
公開:19/07/15 10:10
楽曲お題シリーズ 第六弾

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