ピロートーク

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俯いた頬と、仰向いた面を付け、二言三言喋る。
『明日何時?』
「6時半」
『帰るのは?』
「多分22時」
寝に入る前の儀式みたいなもの。トーンも事務的で、短文の応酬にしかならない。
『おやすみ』
「おやすみ」
枕に顔を埋める。目頭に手を添えて、瞬く睫毛と、ぱさぱさ軽い音に幸せを感じた頃があったな。時計の秒針はあの音に似てて、女々しく縋る自分は見苦しいと思う。
毎日聞いてる声なのに、何でこんなに遠いんだろう。

「時間。起きて」
喧嘩しようが文句言おうが、必ず起こしてくれた。
半音低い、機嫌の悪い時か、照れてる時の声。

ただのコピーって解ってる。
「おはよう」
『    』
この返事だけ、今は無い。
柔らかで全然違う手応えを5秒抱いて、自分の臭いしかしない布の塊をベッドに投げ出す。
『時間。起き 』
――ピッ。甲高い電子音でスヌーズを切る。
この音は、電話越しの別れの、終話ボタンに似てる。
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公開:19/07/13 00:00
寝物語。枕と目覚まし時計

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。

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