10匹

4
8

「私たち抜きで私たちのこと決めないで」
中央にはやたらと声がでかい男。エプロン姿のおばちゃんもいれば、一人は男か女か分からない。四つ脚もいれば、三つ目もいる。
「死にたくなる世の中を変えたい」
震えながら懸命に小声を吐く小僧。それを抱えあげる筋肉質の女。後ろを向いたままのつむじ禿、まだ現れていない奴もいるという。
「こんな人たちに負けるわけにはいかない」
あんたは唾を飛ばしながら指をさす。こんな人たちと呼ばれた連中を掻き分けて、一人の少女が踏み出した。
「誰もがその事実も解決法も全て知っている」
あんたは少女に歯ぎしり。少女は俺たちをまっすぐに見つめたまま。
「目覚めて変化する。やらなければならないのはこれだけだ」
まだ現れていない10匹目とは誰なのか。俺でよければと手を挙げたい気持ちを臆病風が押さえ込む。
せめて自分の意志で一票を投じたい。
ファンタジー
公開:19/07/12 21:15
更新:19/07/15 16:48

puzzzle( 神奈川19区 )

作文とロックンロールが好きです。
https://twitter.com/9en_T

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