孤閨

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シングルベッドの、左半分を空ける癖。
ひと月以上経って、自分の家に戻っても、まだ取れない。入口に近い方がひんやり寒くて、横向きの姿勢は窮屈で、それでも空けてしまう。
「明日何時?」
「6時半」
「帰るのは?」
「22…23時」
23が24になって、『明日』じゃなくなる事も増えて、夢うつつ、マットレスの軋む感覚だけで、帰ったのねって確認して。
「おやすみ」
疲れた鼾を聞きながら、一人で呟いて、傍にいる意味って何だろうと思った。まともに顔を見たのが何日前かも憶えてない。ご飯作って、洗濯して、掃除して。サービスとして、ただただ消費されていく生活。ずっと、ずうっと、この先いつまで――?

『時間。起きて』
「……おはよう」
私の声が録音に変わっても、それが何回繰り返しても、貴方は気付かない。

だから、声だけ置いて行ったのに。
やっぱり左半分は寒くて、あの単調なやり取りが恋しい。
「……おやすみ」
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公開:19/07/13 22:12
寝物語。シングルベッド

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。

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