雨の日にサンダル

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土砂降りの夜にあいつはサンダルを履いてきた。びしょ濡れの彼をみんなが馬鹿にした。
「サンダルなら靴も靴下も濡れない」
店内で乾いた足を見せつけて、彼は一人勝ち誇って笑った。
そんな昔のことを思い出し、その話をすると彼は苦笑した。
「笑わなきゃ負けだって、あの頃は思っていたんだ」
見下されても、馬鹿にされても、嫌な顔せずに笑っていた。
「やめろ、て言う代わりに笑っていたんだ。それだけなんだ」
表面上は上手くいっていたように見えて、ふと零すこいつの内面は、ひどく繊細だ。
「そうしているうちに、上手く笑えなくなったんだ」
燃え尽きたように、何もできなくなった友人。だけど、何故か一緒にいて心地いい。病んで、闇を抱える彼の姿に心が落ち着く。
それは多分、こいつの中に俺を見出してるから。
「お前は頑張れよ」
彼の言葉に否定も同意もしない。ただ、また必ず会いに行く。
これは多分俺の、飼い殺しの友情。
青春
公開:19/07/13 12:29

風月堂( 札幌 )

400文字の面白さに惹かれて始めました!
文字や詩のようなものを書くのが趣味です。
情緒不安定気味でアゲサゲ落差のひどい人間ですw
いろんな方々の作品を読んで、心を豊かにしていきたいです。

無料の電子書籍をつくりました。
『ショートショート作品集カプセルホテル【】SPACE』
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『枇杷の独り言』
ショートショートコンテスト『家族』最優秀賞頂きました。

写真は全て自前でやっています(笑)

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