「あの日」

3
9

「お前、宝塚記念の日だけは妙に不機嫌だよな?」
競馬新聞を広げている旦那にそう言われ、ドキッとした。
旦那は競馬好きだ。お小遣いの範囲で遊んでいるようなので文句はない。ただ、今日は別。
私は一人っ子で父子家庭育ち。幼い頃に母を亡くし、父の手ひとつで育ててくれた事は感謝している。でも一つだけ許せない事がある。
父も競馬好きで、あの日も宝塚記念という大きなレースがある日だった。
「万馬券だ! おい、万馬券取ったぞ!」
大はしゃぎしている父の横で、私はお腹を抱え唸っていた。
「どうした? おい、お前……まさか」
そう、私は初めて迎えるあの日だったのだ。
「こりゃめでたい! 今夜は赤飯だ! 宝塚記念だ!」
それ以降、父は私のあの日に気付くと「お、宝塚記念か?」と言うようになった。デリカシーのない男め。
ちなみに、友達があの日を嫌がる理由も宝塚記念のせいだ、と長らく思っていた事は、ここだけの秘密だ。
その他
公開:19/07/11 21:00
女子が嫌いな宝塚記念 スクー

壬生乃サル

まったり。

2022年…3本
2021年…12本
2020年…63本
2019年…219本
2018年…320本 (5/13~)

壬生乃サル(MiBU NO SARU)
Twitter(@saru_of_32)

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容