気分点眼

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デスクワークに疲れ、一息つきたくなった時、常備してある目薬を差す。
ごく普通の市販薬だが、差した直後から、まばたき3回くらいまで、僕の眼はオフィスを離れ、別の風景を映し出す。

積み重なった綿雲。公園の噴水。野原を飛ぶ蝶々。流氷の漂う海。パッケージやメーカー、成分表示などから組み立てたイメージらしく、薬によって風景は変わる。
念の為、病院で診てもらった。先生曰く、ある種のアレルギーだそうだ。差した刺激と薬効が免疫系と反応し、脳と視神経に誤作動を起こす事で、一時的に幻覚を作り出すのだろうと。実際、病院で処方されたアレルゲンフリーの目薬は、何の風景も映さない。どうせなら、見えた方が断然面白いので、僕は結局市販薬を使っている。

最近のお気に入りは、メグスリノキの目薬。高台の樹上から見下ろす、この町の風景が広がり、視界と一緒に心まで晴れ渡る。今度の週末は、実物に触れる為、ハイキングへ行く予定だ。
ファンタジー
公開:19/07/11 19:50

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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