運命のハサミ

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また違った。運命の人じゃなかった。
昨日、夜中まで飲んで酔っ払って帰ったことは覚えている。で、なんだこれ?
私の身体から何本もの糸が伸びていた。蜘蛛の巣に引っかかったみたいにがんじがらめだ。
「ふぉっふぉっふぉっ」
「誰?」
「私はキューピッド」
「ええ!見た目悪魔じゃん!」
「それは運命の糸。しかーし本物は一つ!残りは本気じゃないって運命の糸です。本物の運命の糸を残して、本気じゃないって運命の糸を全て切ることができれば、君は晴れて運命の人と結ばれます」
「マジ?切ります!」
「ではこの運命のはさみを」
…ってめっちゃ切れないこのはさみ。
「錆びてて切れないんだけど」
「切れ味の良い運命のはさみは有料です。ただし、今なら特別に寿命3年分です! 」
「3年…いいわ。それください」
ジャキン!私は糸を断ち切った。
暗転。
「ダメじゃん。それ魂の尻尾じゃん」
キューピッドのふりした悪魔が笑った。
その他
公開:19/07/11 19:26
スクー 本気じゃないって運命の糸

むう( 地獄 )

人間界で書いたり読んだりしてる骸骨。白むうと黒むうがいます。読書、音楽、舞台、昆虫が好き。松尾スズキと大人計画を愛する。ショートショートマガジン『ベリショーズ 』編集。そるとばたあ@ことば遊びのマネージャー。

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