夜の蝶

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「これは美しい」
古びたバー。初老のバーテンダーが、中年の男性客にカクテルを差し出した。
「テキーラ・サンライズです」
「どれ……うむ、飲みやすいな。これは?」
「テキーラとオレンジジュースを軽くかき混ぜたものに、グレナデンシロップを静かに注ぎ、グラスの底に沈めたもの、となります」
「ほぅ。オレンジを朝焼けの空、グラスの底に沈んだグレナデンシロップを太陽に見立てている、と?」
「はい」
「私のようなオジさんが一人で飲むには勿体ない。女性客でもいれば良いのだが……」男性客が店内を見渡す。「今夜は私ひとり、か」
残念そうな男性客に、バーテンダーが黄金色に輝くカクテルを差し出した。
「こちらをグラス越しに覗いて下さい」
男性客が言われた通りに覗く。
「これは……」
グラス越しにバーテンダーの姿。その姿は、まるで夜の蝶のように妖麗な女性となっていた。
「テキーラ・バタフライです。さぁ、一夜を共に」
ファンタジー
公開:19/07/11 19:05
テキーラバタフライ スクー

壬生乃サル

自由きままに、気の向くままに。
サルも木から落ちる・る・る~。

壬生乃サル(MIBU NO SARU)
Twitter(@saru_of_32)

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