傘のない町

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上司に言われて物件を見に行くところだった。夏なのに空はぐずついて、薄暗く陰気臭い。
ポツポツと雨が降り出して、傘がないことに気が付く。
「気をつけろ。あの物件見に行って、廃人みたいになった奴が何人かいる」
アイツ、何て言ってたんだっけ?思い出せない。

町は静かで人が歩いていなかった。雨が強くなり、コンビニを見つけて駆け込む。傘が見当たらない。
「傘はありますか」
店員が怪訝な顔をする。
「傘を」
「この町に傘はないよ。どっから来たの?雨の日は外に出ちゃいけないんだよ」
店の奥から出てきた女の子が言う。
外に傘を差している女の人が立っていた。
「傘差してる人いるじゃないか」
俺はそう言い捨てると外に出た。
「傘、ないの?」
女の人が訪ねてきた。
「はあ」
僕が頷くと女の人は傘を差しかけてきた。
「行きましょう」
「はい」
えっとどこに行くんだっけ?この人はだれだ?ここは…どこだ?
ぼく…は
その他
公開:19/07/11 18:34
スクー 相合傘廃人

むう( 地獄 )

人間界で書いたり読んだりしてる骸骨。白むうと黒むうがいます。読書、音楽、舞台、昆虫が好き。松尾スズキと大人計画を愛する。ショートショートマガジン『ベリショーズ 』編集。そるとばたあ@ことば遊びのマネージャー。

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