震える

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 風にそよぐ葉擦れの音というのは逆で、葉の振動が空気を震わせているので、声帯の振動で空気を震わせるのと同じです。出窓の外の楓の枝が伸びて網戸を引っかいて蛙のような音を立てていたのではない証拠には、枝を切ってからも同じ音が響いていて、その仲立ちとなるガラスもまた振動しているのですから、当然、その振動は私にも伝わって震えていたからこそ、私には楓の震えも室内のパキラの震えも感受できたのです。
 一体何を相談しているのかがどうしても分からないから、最新の行動検知カメラを手配したから、これで微細な身体の震えを測定して犯罪を行うかどうかを暴いてやりますから。
 すると、楓もパキラもガラスもカーテンも、紫陽花も猫も茄子もIHコンロも、洗濯機も、私の十本の指も、瞼も、風鈴も、扇風物も、みんな、よからぬことを企んでいたと分かりました。だけど、私の身体も同じように震えていたから、ざまあみろって思って愉快です。
ホラー
公開:19/07/11 10:32

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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