かくれんぼ

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終戦間もない頃、田舎の旧家で法事があった。退屈な法事の後、童たちはかくれんぼをして遊んだ。
廊下をドタバタと走りまわりそれぞれの隠れ場所を見つけては隠れた。
「もう、いいかい?」
「まあだだよ」
一人の女の童(めのわらわ)が部屋へ入ってきた。行李を開けると深い夜のような濃紫の着物が収められていた。女の童は濃紫の着物を被り行李に隠れた。
濃紫が女の童を包み、薄暗闇が濃紫を包み、行李が全てを包み隠した。
「もういいかい?」
「もういいよ」
鬼の足音が近づいてくる。「わあー。みーつけた」キャーキャーはしゃぐ声がする。どんどん近づいてきた。ドキドキドキ…。
「絶対、見つからん!」女の童は、固く念じた。
さわさわと濃紫が女の童をより優しく包み込み行李がさらにしっかりと蓋を閉ざす。
そうして女の童はずーっと何十年も見つからないまんま。
童たちは大人になり、かくれんぼしたことすら忘れてしまっていた。
ホラー
公開:19/07/11 22:37
schoo 時を忘れたパープル

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