ニャーキャッション

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演奏会当日、急にパーカッションの音が出なくなった大ピンチにその猫は現れた。
「お困りだな。いつも煮干しくれるお礼にわっしが助けてやるよ」
親指?を自分に向けて決めポーズ。色々つっこみたいが時間がない。ただ、語尾に『にゃん』って付けないんですね。

幕が上がると猫は仰向けになった。
「わっしの肉球を叩け。音が出るから」
渡された楽譜には、おたまじゃくしの代わりに猫の足跡が踊るように五線に乗っている。その通りに肉球を叩いた。プニプニと柔らかなそれは桃色の鍵盤だ。流れてくるメロディに指も心も弾む。
「ええじゃない、ほらもっと強く!もっと速く!あ、そこはソフトタッチで!」
気づけば他の楽団員も指揮者もお客も、みんな笑顔で踊っている。
演奏会は大成功。でも猫は不満気だ。
「なんで“猫ふんじゃった”をやるかな」
明日煮干しあげるから、と言ったら途端に機嫌が直った。
「そんな猫だましなら大歓迎だにゃん」
その他
公開:19/07/09 23:29

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