遺伝

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目を覚ますと、自分の顔が目の前にあった。じっとこちらを見ている。鏡か。いや、ここはベッドだ。なぜか自分に見下ろされている。そして天井はやけに高く、ベッドも広い。ふと自分の体を見ると、白くふわふわとした毛並み。
部屋のドアが開いた。泊まりに来ていた知人だ。何か言おうと口を開くが、出るのは鳴き声ばかり。しかし知人は、
「おはよう。そっちが人間?」
と、事も無げに鳴き声をあげる私を見た。呆然としていると、
「起きたと思ったらキャットフードに突進するし、雀捕まえようとするし。まさかとは思ったけれど。」
彼の視線の先では、自分が、ベッドの隅に所在なげに座っている。
少し待ってて。と言った知人が持ってきたのは、50音表。おかげで意思疏通が計れるが、はたとミルクをなめるのを止める。彼はなぜ、こんなにも冷静なのだろう。そういえば、この子猫の親は…
「遺伝かな。うちも時々、入れ替わることがあってね…」
その他
公開:19/07/09 22:51
更新:19/07/09 22:52

秋ノ耀( 東京 )

小説、特に短編を書いています。
 

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